2016/10/09

夜中、窓を打つ雨の音で目が覚めた。びっくりしてこわくなってでも面白くて、まどろみながら笑ってしまった。朝目が覚めたとほぼ同時に、メッセージが届く。「おはよう、秋だね」と言って笑うから、わたしも笑って「秋ですね」と答える。

 

サービスエリアでお茶を買おうとして、いつも通り『綾鷹』を手に取ってから、遠足には『お〜い、お茶』だろうという話になり取り替える。そんな情緒をわかってくれる。なぜか一日中ジョンと呼ばれる。初遠出デートでd&departmentってシティボーイじゃん。真正面でご飯を食べているとよく目があう。カリモクのソファに座って「もうこれテレビ見てるよね」「あっちに窓ありますよね」という茶番。(500)日のサマーだった。わたしがお手洗いに行っている間、外で田んぼと電車と富士山という贅沢な風景を眺めているから、こっそり店内でものを買って駆け寄る。包装紙がとてもかわいい。彼の子どもの頃の話とか、家族の話とかを聞く。「滝まで徒歩2分」。思ったより舗装されていて思ったより観光地化していたので笑ってしまった。手軽な滝。一番最近行ったのが養老だったのが悪かったのかもしれない。音と川がきれいなのが良かった。「あれって〜ですか?」と聞くと真面目な声色と真顔でそれっぽいことを答えてくるので笑ってしまう。テイク2までやったのに途中で笑ってしまう。犬。ぶさいくでボサボサの犬に「ジョン」と名付けるので「コラッ」と怒る。彼に似た犬が接客してくれた。わしゃわしゃと撫でる彼の手つきに、動物のお医者さんになりたかったという少年の彼を見る。夜のサファリゾーンは動物たちがうろうろしていてよかった。「車の中でムーミンビスケットを食べながら野生っぽく飼われた動物を眺めるだなんて贅沢な遊びですね」。動物って久しぶりに見たかもしれない。キリンはでかい。ドライアイスのような霧が一気におりてきたので夢の中かと思った。霧の中を走るのは初めてだ。サービスエリアのうどんが食べたいですと言ったら安心したような声を出すので、最初から言えばよかった。サービスエリア好き。平成お金を払う合戦。ここは会社じゃねーんだぞ、頼むから払わせてくれ。券売機前でキャッキャしてしまったのでバカップルかと思われていたかもしれない。付き合っていません。うどんを食べながら寝そうになってしまい、それから5分くらい眠かった。コンタクトがぱしぱしする。ヨボヨボ歩いていると腕を取ってくれる。すぐに放されるので、なんだか複雑な気持ちになった。平成お金を払う合戦2。彼のポッケに無理やりお札を突っ込んで逃げる。わたしは売春するおっさんか?本日初めて手をつなぐ。酒が入ってない状態は初めてだ。一瞬ビクッとしてしまった。双方指輪をジャラジャラ付けているので、繋いだ手について言及される。言及されると照れてしまって「う、あ、そうですね」としか言えない。車の中で、話したいことや相談したいことがたくさんあったのだけれど、なんとなく遠足っぽくないし言い出せなくて別のことばかり話していた。悩んでいることはあるか聞かれた。眠くて頭が回らない。考えていることや考えなくちゃいけないことはたくさんあるけれど、悩みというには語弊がある気がしたのでショートブーツの話をしてしまった。彼から聞いた話を今度きちんとフィードバックしたいと思う。自宅近くのコンビニ前で、二人してストレッチをする。どうしていいのかわからずぼさっとしていると、肩を揉んでくれるので「アー」という声を出してしまう。いやいや立場が逆でしょうと言って辞めさせたけれど彼の肩を揉む勇気はない。まずでかいし。こちらから触れたり、触れるのを許したりしてしまうと、もうなんだかだめな気がして、目も合わせられなかった。いつものたれ目でこちらを見てくるので、どうしようもなくなってヘラリと笑っておく。

 

帰宅してから落ち込んでしまった。わたしは何をやっているんだ。自分の言葉で自分の首を絞めて、でも言ったことに後悔とかはなくて、でもきちんと浅ましく期待していた。首を絞めていると思っている時点で、本当に嫌な女だ。最低だこんなの。「ありがとうございました」を言い換えた、使い古した言葉ばかりをぽちぽち打って、彼の返信を待っていたはずなのに、見ないまま泥のように眠ってしまった。だれかおれを殺してくれ。そう思ってから、尻拭いまで他人に任せるなんて本当にわたしはだめなやつだと思い直してさらに落ち込んだ。デートに行って落ち込むのは初めてだ。

 

 

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