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2017/03/08

角田光代

基本的に和食。安居酒屋でビール。うんざりすると割と容易にカップラーメンを食べる。

 

江國香織

野菜、果物は基本的に生。ワインやカンパリハイボールなど。老舗の洋食屋や緑の生い茂るフレンチ、薄暗く女性がバーテンをしているバーなど。タバコ。外食では本格的な欧州系の食事。

 

よしもとばなな

豆、根菜類。煮込んだり丸焼きしたり、温かい料理。作る。

 

著作ほぼ制覇してみてこんな印象。

 

 

189文字

2017/02/19

窓の外の流れる景色を睨んだのは、彼の車では初めてだった。濡れたリッチブラックの路面に、信号機の光が映ってきれいだった。

「どうにかしたい、ごめんね、そうじゃない」という気持ちが、普段飄々としている彼には珍しく焦った表情と、撫でてくれる手から伝わった。一呼吸おいても、ふた呼吸おいても、腹の中でふつふつと湧き出てくるものがどうにも収まらない。信号機の反射が滲んでぼやけていく。怒りで泣くのは久しぶりだった。信号をいくつか通り過ぎて、その度に手や、腕や、襟足や、髪を撫でてくれるのだが、その体温すら受け入れ難く、ちょっとだけ笑いながらだけれども、「むかつく!」「触んな!」と彼の腕を突き返した。

「男性のあなたにはわからない」と、自分の言葉尻がついに泣き声になったのを聞いた。気がつくとわたしは彼の膝の上に頭を乗せさせられており、泣いて怒っていた。さすがにこの体勢はと恥ずかしくなって起き上がろうとすると、「まだだめだよ」と頭を押さえられてかなわないので、泣きながら笑ってしまった(力つよい)。停めた車内は静かだった。腹から出てくる思いをそのままこぼした。この人なら受け入れてくれるだろう、真剣に聞いてくれるだろうという、信頼とも甘えとも言える気持ちに身を任せた。他人に対して怒るというのは久しぶりのことだった。わたしのその怒りに、当たり前の話だが、男性は男性で、矛盾に満ちていたり違和感を覚えたり見過ごしたり飲み込んだりする他人からの言葉や行動があるのだと、本当に当たり前の話だったのだろうが、教えてもらった。

身体に溜まってゆくモヤモヤした怒りや違和感、悲しみ、虚しさたちを、くだらなくささいで、自己肯定感の低さからくる理由でそのままにしておかなくてよかった。わたしが考え、傷つき、悲しんだ言動を、この人に知ってもらえてよかった。

初めてけんかした日は、釣った魚を煮たり焼いたり刺身にしたりして食べた(比喩じゃない)。この人をとてもすきだと思った。

 

 

825文字

2017/02/15

2017/02/13

・グザヴィエ・ドラン「たかが世界の終わり」

・Casa BRUTUS「美しい日用品ネットストア開店!」

・on reading 菊地和歌子写真展「echo」

・栞日 ホモ・サピエンスの道具研究会 生活と研究

世界の何もかもから、「家を出ろ、一人で暮らせ」と言われている気がしてならない。小さい頃は神様がいて 不思議に夢を叶えてくれた。わたしは育ったこの町のことが嫌いになって、家族のことが嫌いになりつつある。フェイスブックを捨てよ、町へ出よう。ドランの言っていることは、何であれそうであるが、きっとわからない人には一生ずっと本当に1ミリもわからないのだ。愛し合っているのにわかり合えなくて、会話の端々だけがすれ違い、ささくれ、スイッチがカチカチと切り替わって停電、停電、一人ずつドロップアウト。最後悲しかったけれど、わたしは安心したのだ。結局人間は一人で死んでいく。

 

394文字

2017/02/04

あ、説教だな〜〜と思った。姉が珍しく、わたしの目を見て座り直して話し始めた。気が強くしっかり者の姉と、ぼさっとしている妹だったので、よく怒られ叱られたし、それを極度に恐れていたから、その兆しがあるとなんとなく察する。

日々を繋ぎとめ家族内をうまく回しているのは専業主婦の母で、祖母・父は鈍く、わたし・姉は自由気ままに我が物顔で過ごしている。我々五人家族は、日々の中で思いやりを持って過ごすというところからは遠い。しかし一度事が起これば、一番頼りになり一番気を回して一番考え一番発言をするのは姉なのだった。

実際には説教ではなかった。いつものハキハキとした、他人が聞いたら怒っているように聞こえるであろう言葉尻で、わたしのことを、心配していた。心配してくれていた。聞きながら泣いてしまった。

「自分でも、自分は他人を簡単に信じていたんだと気づかされてびっくりした。用心深い慎重なタイプだと思っていた。それに、他人が、他人であるからして全く考えることが違うことにびっくりした。うちの人はみんなみんな、お人好しで人がよく、世間知らずで、騙そうとか得をしようとかズルをしようとか考えられないから、騙そうとか得をしようとかズルをしようとか思っている人の発想なんて気づきもしなくて、それでまんまと損をする。」

分かってほしくて泣いたわけじゃない。分かり合えなくて泣いたわけじゃない。うまく説明できなくて泣いたわけじゃない。怒られたと思って泣いたわけじゃない。嬉しくて泣いたわけじゃない。多分多分多分。なんだかわからないけれど涙が出て二人で大泣きしてしまった。

彼女にこんなことを言わせた男をひっぱたいてぐずぐずに煮込んでやりたい。彼女が泣く泣く我慢し、諦め、新たに取りたくない相撲を余儀なくされたあの日々、わたしは彼女が前進したくて前進しているものだと信じていたのだ。全く滑稽である。

 

話をしよう。恋人の良いところ、わたしが良いと思っているところ、その日してくれた親切なこと、彼が今いかに頑張っているか、わたしがいかに大事にされ、愛され、気遣われ、思いやってもらっているか。話をしよう。見当違いな心配を減らし、見当が当たっている心配をしてもらおう。

姉。気が強くて横暴ですぐ怒ってうるさくて自分勝手でうざくて、真面目で信念を持ち論理的で他人のことを思いやるあまり強情で心配性で用意周到で寝てる時も口の端がキュッと真一文字に結んでいて写真で笑うのが下手くそな姉。わたしは君の兄弟であることが嬉しい。

 

 

1041文字

2017/01/29

2017/01/29

「おはようございます。大変申し訳ないのですが、ちょっと体調が優れないので今日はキャンセルさせてもらってもよろしいでしょうか。朝にごめんなさい!」というメッセージをひどい頭痛の中でぽちぽち作って送信。

今日は昼間から飲んだくれる予定で、すっかりワイン腹イタリアン腹にして楽しみに楽しみにしていた。のに、昨日のあのハチャメチャな買い物を終え帰ったらとてもくたびれてしまって、一時間だけ眠って、幼馴染との飲み会に顔を出しながら、なんだか嫌な体の重みや寒気があると思って、思ったけれどどうしても我慢できなくてこだま(2017)『夫のちんぽが入らない』扶桑社を一気に読んだ。それでも11時に眠った。

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない

 

 

ひりひりしそうな生傷があるのを見てしまい「ワア痛そう」と眉をしかめて、そうしたらその傷を彼女自身が、他人が、彼女の夫が、見知らぬ男たちが、彼女の教え子たちが、彼女の家族たちが、素手でどんどんと触っていくので、見ているこっちも痛いのか痛そうなのか愛なのか悲しみなのかわからなくなってしまった。

ちんぽが入らない私たちは、 兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。

そうして寝て起きたら、というより寝ている体勢ですでに頭痛がひどく、このまま死んでしまうんじゃないかと思って、それならデートに行って彼の隣で死のうと考えたけれど、あまりにもひどくて歩きも這えもしなかった。よく仮病で行った学校の保健室に、「あなたの痛みはどっち?」とあり象が足踏みをしているのともう片方なにかがなにかをしているイラストが書いてあるポスターを思い出した。くるしみの中で浅い夢を見る。もう覚えていない。

すこし日が傾いてきた頃目が覚めて、すぐに直感で治ったことがわかった。コンコンと頭を傾けて頭痛を探すと、遠く遠くにすこしだけ頭痛のあとがあるのがわかる。もう大丈夫だ。死ななくてよかったあ。

週末にデートをしなかったのは初めてかもしれない。棒に振った日曜を取り戻す100の方法を教えてくれ。とりあえず靴を磨いて髪をセルフで染めて今はこれを書いてる。

 

 

878文字

2017/01/28

2017/01/02

彼の背中を撫でて驚いた。ブラジャーの線がない。わたしはあまりにも男性という生き物から遠ざかっていたらしい。今年もどうぞよろしくお願いします。

 

2016/?

彼は双子。幼い頃の話などを話してくれると、「僕らはここの幼稚園に通っていて」と自然と一人称が「僕ら」になる。彼の双子の弟には会ったことがないので、些細な会話の端に双子の要素を見つけると、ついニヤニヤしてしまう。

 

2016/12/?

機会として発言しておきたいけれど、発言すべき事柄が見つからないのでひたすら黙っていることが続く。中学校の授業みたい。罪悪感とつまらなさと焦燥感。どっと疲れる。大学では、話を聞いているだけで頭の裏でリンクがバチバチ走って言いたいことが溢れてきた。挙げられる話題に近いことを日々インプットしてきたからかな。こまった。こまっている。わたしはどうしてここにいるんだろう。

 

2017/01/28

一日が24時間で一週間が7日、一ヶ月が30日か31日で一年が365日。全くもって時間が足りない。ざっと読める小説ならまだしもまとまった時間をとって読みたい新書なども読まなくちゃいけないし、話題になってる映画は必須でそれに加え気になる小シアター系の映画も見なきゃいけないし、こうしてぐちゃぐちゃとブログを書かなきゃいけないし、展覧会を東京金沢福井長野そして名古屋に観に行かなきゃいけないし、いつもの古着屋をめぐってあとラシックで服を見なきゃいけないし、雑な恋の話やデザインのわるぐちを言いに飲みに行かなきゃいけないし、幸福で満ち足りたうきうきするデートをしなきゃいけないし、絵を描かなくちゃいけないし、新しい音楽を開拓しなきゃいけないし、忙しい、忙しい。あと60年しかない。日々本は出版されるし映画は上映され週初めにジャンプが店頭に並びTwitterは更新される。大変だ。鋭い嗅覚を持って生きるぞ。

 

 

797文字

2016/10/15

告白された日の話

何を言われているのか一瞬分からなかった。告白された。でも気持ちの良い耳鳴りもしなくて、よく分からない涙も出てこなくて、胃のあたりがぐっと重苦しくなっただけだった。これは、恋じゃないかもしれない。「付き合いたいと思ってる」と言われて、なんていったらいいかわからなかった。わたしはわりと表情や声色を作って他人と接することができると自負していたけれど、この時ばかりは、素直に「困っています」という喃語のような声が出てしまった。

そろそろ行こうか、といつもの60%の声色で言われて、わたしは頷くことしかできなくて、無言で山道を降って学校のそばを通り過ぎて、坂を登りきったところで、急に月が現れた。丸くて大きくて明るくて位置が低くて、穏やかな海がその光を受けて、広くて明るい光の道を作っていた。ムーンリバーだった。あまりにも美しいことにびっくりして、歩みが止まってしまった。最終便の船が行ってしまうかもしれないのに。「ああ」と、感動した声が素直に出てしまった。笑った彼が振り返る。夢の中みたいだった。「もういいです」と言ってしまう。何ですぐに答えることができなかったのかわからなくて、心の中がずっとぐちゃぐちゃしていて、酸素が頭に回っていないような感覚でなにも答えが出なくて、お腹も空いているし足も疲れたし、もういいじゃんこの島に泊まっていこうよ、月と海がこんなに綺麗なんだしずっと見ていようよ、ずっと波の音を聞いていようよ。でも実際にはそんなことはあっていいはずもなく、おとなしく船着き場まで一生懸命早足で歩いた。

ポール・ギャリコの新しいやつが出ていたのでと猫が好きな彼にお渡しすると、フラワーベースとドライフラワーをプレゼントしていただいてしまった。男性から「告白だから」と花束を渡されるのは初めてのことだ。ちょっとだけ泣きそうになった。この人は本当に格好いい。気を確かに持っていてよかった、後から後悔するところだった。「ベンツで迎えに来て船に乗せてくれて扉を引いてくれて花束をプレゼントしてくれる男性」。

(後ろから抱きすくめられてしまった。驚いて自分でわかるほど肩が震えた。「これはナシ?」と聞かれるが、言葉にならない声しか出なくて、「今日はアリにして」と言われる。顔を見ることができない。) 

人としても良いなと思うところがいっぱいあって、同じデザイン界隈の人間としても尊敬していて、男性としても格好良いと思えて、じゃあなぜダメなのだと責められると、自分でも説明がつかない。

「奴が君の前に現れたとき、さっと風が吹いた?ベールがそよいだ?月が大きく輝いた?」

笑いかけてくれただけでどうしても手を触りたくなってしまって、抱きしめあっただけで耳鳴りがするほど気持ち良くて、一緒にご飯を食べるとなんでも美味しいけれど胸がいっぱいで喉を通らなくて、そんな気持ちにならないのはわたしが悪いからなのだろうか。あんな奇跡みたいな恋を経験して比較してしまっているからなのだろうか。あの元恋人に拘泥しているわけでは全くない。そこだけは勘違いしたくない。人ではなく、あの時の感覚と比較している。あれはなんだったのだろう。わたしはあれが恋だと思っているのだけれど、他の人は何をもって恋だと認識しているのだろうか。

「あれは若かったからではないか」と言われて、確かにそうかもしれないと思った。あの視界がやけに光る感じ、でも胃が苦しい感じ、どうしていいかわからないどうしようもない感じ。あれは確かに若さのせいだからかもしれない。年齢を重ねるごとに冷静になっていっている感じはある、残念なことに。

少女漫画みたいなこと言ってんじゃあないよと怒られてしまった。でもわたしは経験してしまったのだ、少女漫画みたいな恋。

・酒が多く用いられる

・社内の人(=警戒心が強くなる)

・年上

・付き合いの長さ

・わたしがぐちゃぐちゃと考える体質に(より一層)なった

・言ってもらった時正面を向くことができなかった

・「本当に恋だと言える恋」っぽいものを経験してしまったあとだということ

あんなモテ男を捕まえておいてわたしは何をやっているんだ。格好いいと素直に思っていた人と手まで繋いでおいてわたしは何をやっているんだ。贅沢者だ、もったいないお化けが出る。曰く「チャラ男に弄ばれているというよりむしろ君が弄んでいるよね」。一連の流れを話すと、同期は「それはもう「好き」か「クズ」かだよ」と言った。今となっては彼は「好き」であったしどちらかといえばわたしが「好き」か「クズ」かだ。

「いやだと言われるまで諦めないよ」とメッセージが来ていて、くらっときてしまった。本当にそんなこと言える人がいるんだ。本当にそんなこと言ってもらえるのがわたしでいいのか。

赤ん坊のように「うー」「あー」しか答えられなかった(答えてもない)ので、「ちゃんと整理していつかきちんと自分の気持ちをお伝えします」とだけは伝えた。わたしはこれからどうするんだろう。 

絶対にかなうわけのない恋(恋?)だと思っていたから、格好いいとは思っていたけれど、自分の気持ちを見ないふりをして蓋を閉めてぐるぐるにガムテープを巻いて海に沈め込んで(目の保養心の潤い)と遠くから眺めているだけにしておいていたから、自分でも本当にわからなくなってしまった。食事に誘われても「どうせわたし以外の子とも行ってるし」と彼の言動に勝手に理由をつけて(実際に行っているはずなんだけれど)、「どうせわたしのこと珍獣を眺めるような気持ちで一緒にいるんだろうな」と彼の気持ちを勝手に決めて酒をかっぱかっぱ飲んでいた。

実際、本当に彼はよく分からない。わたしだって鈍くないし(性格が激悪いので)、普通の女の子(ex:西野カナ)よりはちょっと少なめかもしれないけれど恋愛してきたし、だから今まで「この人わたしのこと好きなんだな」と察してその後の自身の言動を決めることはよくあった。でも彼は本当によく分からない。何を考えているのか、何を考えてわたしと遊んでいるのか。

わたしはこれからどうするんだろう。 

 

 

2489文字